サナキの森 粗筋とネタバレ 粗筋その4
<「お勢殺害事件」>
「東条泪子」の曾祖母(曽お祖母ちゃん)であった「東条龍子」は、実際に行なわれていた「冥婚」の、最後の体現者であった。
そんな中、「龍子」の姑(義兄の母で、龍子の夫である亡くなってる次男の母でもある)が、上半身を、斜めに切られ、まるで「サナキ」のような姿で殺害される事件が起きた。
しかも、殺害現場は納屋の中で、入り口には南京錠が掛けられ、誰も出入りが出来ない状況で、事件は迷宮入りになってしまった。
第二次世界大戦(太平洋戦争)前に起きた、この迷宮入りの殺人事件の真相を、「荊庭紅」、「東条泪子」、そして、「陣野先生」が、殺人事件の解決に挑む。
その粗筋(2)を書いておこう。
1)時代の流れ
・満州事変から何年か経った後、
「荊庭零」と「小野行春」が、「佐代村」に温泉旅行し、
「冥婚」最後の体現者「東条龍子」に出会う。
・「小野行春」と「東条龍子」が不倫状態になる。
・「小野行春」と「荊庭零」は、東京に戻るが、
何故か「小野行春」は自殺する。
・「荊庭零」が「東条龍子」の元を訪ね、
「小野行春」の自殺について、語る。
・「東条龍子」の姑「お勢」が、
密室殺人で「サナキ」のように殺される。
・「東条龍子」が流産する。
「小野行春」との間の子ではないかと、推測される。
・第二次世界大戦が終わる。
・「荊庭零」たちが「東条龍子」と出会った十数年後の1950年に、
小説「サナキの森」が出版され、
それを読んだ「東条龍子」は、怒り、破って燃やしてしまう。
2)陣野先生の推理
・「荊庭紅」が恋している美術予備校の「陣野先生」に、
小説「サナキの森」や殺人事件のことを話したところ、
「陣野先生」は、
〇小説「サナキの森」を古本市で手に入れ、読んだ。
〇小説の中の表現を見ると、
義兄は「小野行春」で、
亡霊となった弟は「荊庭零」で、
「荊庭零」も「東条龍子」に恋をしていたのではないか?
〇鼈甲の帯留めを「龍子」に贈ったのは、
「小野行春」でなく、「荊庭零」だったのではないか。
〇その当時、東条家が飼っていた秋田犬は、
家の者以外には懐かず、「小野行春」も咬まれているので、
「小野」が、「龍子」との恋を邪魔する「お勢」を殺すことは出来ない。
と言うことで、内部の人間の犯行と言うことになる。
と推測する。
3)「お勢」の死のいきさつ
・「東条龍子」と「小野行春」が恋に落ち、妊娠し、
「小野行春」が自殺した後、
「龍子」への脅迫の手紙が届いた。
・数日後から、
〇「龍子」の部屋に鳥の死骸が置いてあったり、
〇「冥婚」相手の夫の仏壇が荒らされたり、
〇「龍子」のお膳の料理が変な味で、吐いてしまったり、
の嫌がらせが起き、「龍子」は、「お勢」の仕業だと言い回ったそうな。
・それに対して、「お勢」は、龍子に、
「そんなに疑うなら、自分を納屋に閉じ込めておけ。
その間に、嫌がらせが有ったら、
私とお前の夫(冥婚相手)に詫びて、家を出て行け。」
と言い、必要な物を持ち込み、納屋に入ったそうな。
・それを受け、「龍子」が、南京錠を掛け、鍵でロックし、
鍵は、長男の「舟一」が、村の中心に有る深い井戸に投げ入れ、
村人は、鍵が井戸に落ちる、「ポチャーン」と言う音を聞いたそうな。
・当日の夜は、「舟一」が声を掛けると、中から「お勢」が返事したが、
翌朝、下女が声を掛けても返事が無く、家中の者が集まり、
南京錠を壊して納屋に入ると、「お勢」は、
胴体を斜めに切られ、仰向けに倒れており、
傍には、誰も見たことの無い、血まみれの花模様に着物が有ったそうな。
・警察が調べたところ、
〇窓には、内鍵が掛かっていて、外からは入れない。
〇唯一、入れる納屋の正面扉には、南京錠が掛けられていた。
〇凶器は、納屋の中に入れてあった手斧で、
「お勢」が寝ている隙に、殺害したようである。
〇花柄の鮮やかな着物は、返り血を浴びない為の物らしい。
〇井戸の中に捨てられていた鍵を探し出し、
掛金部分が壊された南京錠に差し込むと、ピッタリ合って、開閉出来た。
とのことだった。
・自殺したと言われる「小野行春」は実は生きていて、
自分たちの恋を邪魔する「お勢」を殺しに来たと言う人もいた。
・死体が、伝説の「サナキ」に似ていたので、
「サナキの祟りじゃ」
と言う人もいた。
4)南京錠の謎
・「荊庭紅」と「東条泪子」が、赤鳥神社を調べている時、
「泪子」の父が来て、
「殺人事件の時に、納屋に入る為に壊された南京錠が見付かった。」
と伝える。
・急いで東条家に戻り、南京錠を確認すると、
〇上に突き出た掛金部分は曲がっているが、
〇鍵は挿したままで、
〇今でも動く
物だった。
・「陣野先生」は、「荊庭紅」が再度「東条家」を訪れる前に来て、
「東条泪子」に、或る実験を頼んで帰る。
〇それは、犬小屋に張ってある犬の名前札を取り換えてても、
〇前回、東条家に来ていて、
名札を見ている「荊庭紅」が、取り換えに気付くかと言うことで、
「紅」は、取り換えに気付かなかった。
のである。
・「陣野先生」は、
〇姑の「お勢」が殺される前に掛けてあった南京錠と、
「お勢」が殺されてて、壊してドアを開けた後の南京錠は、
別の物にすり替えられた。
〇しかし、集まった人は動転していて、気付かなかった。
と推測を「泪子」に伝え、帰って行ったそうな。
5)南京錠のトリック
・「お勢」が自分から納屋に入った後、
「龍子」は、自ら、Aの南京錠を、Aの鍵で掛け、
入れ替えたBの鍵を、義兄「舟一」に渡し、
村の井戸に捨てさせる。
・夜中に、隠し持っていたAの鍵で、Aの南京錠を開け、
納屋の中に入り、「お勢」を殺害し、
Aの南京錠を、Bの南京錠に付け替えておく。
・呼び掛けても「お勢」の返事が無いので、
義兄「舟一」らが、南京錠を壊し、中に入り、
「お勢」の死体を発見し、大騒ぎになる。
みんなは気が動転しているので、
南京錠がすり替えられていることに気付かない。
・警察が井戸を探して見付けた鍵は、Bの鍵なので、
壊したBの南京錠とピッタリ合う。
その所為で、南京錠が掛かっていて誰も入れない密室で、
「お勢」が殺されたことになる。
・「お勢」の葬式の後、
唯一、身内が亡くなった時にだけ「冥婚」の妻は外出出来、
「赤鳥神社」に参れるしきたりなので、
その時、「龍子」は、Aの南京錠とAの鍵を祠に隠す。
・「赤鳥神社」は、年に1回、村人で掃除をするので、「龍子」は、
南京錠と鍵が発見され、自分の犯行がバレると心配するが、
「龍子」の殺人を見抜いた「荊庭零」が、「龍子」を庇う為、
南京錠と鍵を持ち去ったので、「龍子」の殺人は露見しなかった。
「東条龍子」から「荊庭零」への手紙で全てが明かされる。
最終ページに続く。
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