サナキの森 粗筋とネタバレ 粗筋その1
「在庭冷奴(あらばれいど)」の小説から
<サナキの伝説>
本名が、「荊庭零」は、「在庭冷奴」のペンネームで、「サナキの森」と言うオカルト作品を残していた。
先ずは、その粗筋を書いておこう。
1)さまよう姉妹
・80年余り前の満州事変の頃、
・身寄りが無く、住む家も無い姉妹が、
村から村へと流れ歩いて生きていた。
・姉は、行き着いた村の男に、体を与え、
換わりに、食べ物などを貰い、生きて来た。
しかし、それを知った村の嫁などが、
嫉妬で、姉妹を殴ったりして追い出し、
姉妹が一カ所に落ち着いて住むことは出来なかった。
・そんな中、姉が病で死んでしまい、
姉の着物を剥いで、裸の姉を埋めた。
・妹は、小夜告村の神社に行き、
社(やしろ)の中で、貰った豆を食べようとしていた。
・そこへ、村一番の分限者(長者)の跡取り息子が来て、
お供えを置いて行ったので、そのお供えを取って食べた。
2)冥婚への誘い
・次の日も、お供えの饅頭(まんじゅう)を持って来た跡取り息子は、
娘(妹)に、
「弟は満州で死んだと知らせが来た。」
「せめてもの慰みに、嫁を与えてやりたいが、
村の女で冥婚を了承する者は居ない。」
「嫁に来てくれれば、
畳の上で寝られるし、赤切れの足に足袋も履けるし、
饅頭もうんと食わしてやる。」
と頼む。
・娘は、今の生活から抜け出せるならどんな処でも構わないと考え、
跡取り息子に着いて行った。
・山の上の屋敷では、長男(跡取り息子)が汚い娘を連れ帰ったので、
「若旦那様は、気が違ったか?」
と狼狽えたが、娘を風呂に入れ、化粧をさせたら、娘の美しさに、
「若旦那様のお目は確か」
と、みんなが納得した。
3)冥婚
・弟の遺骨が帰って来て、婚礼の儀式が行われ、
村中の民が呼ばれ、大賑わいの披露宴が行なわれた。
・上座に、座布団が2つ並べられ、弟の位牌と娘が座ったが、
集まった村人は、娘の美しさに驚き、
「まさか本当に座敷童の類ではないでしょうね?」
と大騒ぎするほどだった。
・お開きになり、嫂(あによめ=長男の嫁)に手を引かれ、
弟の位牌が置かれる仏間の、隣の8畳の間に導かれ、
入ると、部屋の隅に、黒い霧のような人影が立っていたが、
姑(しゅうとめ)と嫂には見えないようだった。
・娘が、三つ指を着き、
「今日から宜しうお願いします。」
と挨拶すると、夫である黒い影が娘を抱擁し、
夫婦の契りを結んだ。
4)義兄(長男)の心遣い
・姑は、しょちゅう仏壇にお参りに来て、
娘を可愛がり、娘も姑に懐いた。
・義兄も、娘を大切にし、
新しい着物や簪(かんざし)、化粧品などを届け、
娘に身づくろいや知識を与えた。
・しかし、それと同時に、義兄は、
弟の亡霊と娘が行なう夫婦の営みを、盗み見るのであった。
5)破綻
・弟の嫁である娘に、義兄は溺れて、部屋に居る時間が長くなる。
・それに対して、弟の亡霊は恨めしく思うが、実体の無い悲しさ、
いじけるしか出来ない。
・もう一人いじけたのは、長男の嫁である。
嫂(あによめ)は我慢が出来なくなって、娘の部屋を盗み見る。
すると、娘に美しい着物や飾り物を着けさせ喜ぶ自分の夫を見える。
そして、恨みがましい義弟に気付き、悲鳴を上げる。
・悲鳴に気付いた義兄が襖を開け、自分の妻に気付くが、
直ぐに襖を閉めようとする。
・怒りに駆られた嫂は、娘に殴り掛かるが、それを止めようとした夫が、
妻を押したところ、妻(嫂)は長火鉢の角に頭を打ち付け、死んでしまう。
・娘は、死んだ嫂の体を義兄に清めさせ、
剃刀や簪を使って、嫂の顔を改造し、死んだ自分の姉に似させる。
・何日も籠りっ放しの若旦那と、帰って来ない嫂に、
姑や使用人は心配し、部屋に来るが、若旦那が追い返す。
・そして、嫉妬に荒れ狂う弟の亡霊と、嫂の死体を横に、
とうとう、義兄と娘は、結ばれてしまう。
娘にとって、初めての実体を持った男との性交だった。
6)放浪の旅
・我慢が出来なくなった姑が、とうとう襖を開けた。
そして、部屋の中を見て倒れてしまう。
・倒れた母を跨ぎ、義兄は娘を外に連れ出そうとする。
しかし、弟の亡霊が、娘のもう片方の手を掴み、放さない。
その結果、娘の体は、
義兄が持った、左手と頭、
弟の亡霊が持った、右手と胸から下、
に、千切れてしまった。
・頭と左手を持って逃げた義兄は、
その内、弟と同じ亡霊と化し、その霊も消えてしまう。
娘の頭は、箱に入り、享保雛の骨とう品の振りをして生き続けた。
・右手と胸から下の体になった方は、弟の亡霊も消えてしまい、
一人になった娘の体は、御高祖頭巾を被り、頭が有るように見せ、
体を売って生き続けた。
7)出会い
・右手と胸から下の右側の娘は、あちこちさまよった結果、
小夜告村に帰って来た。
・頭と左手の娘は、売り買いされ、小夜告村の男に買われた。
しかし、その嫁が、夫に呆れて、森の中に捨ててしまった。
・そこに、彷徨って来た右側が近付き、
長い年月の末、2つの体が、やっと出会えたのである。
次のページ「戦後の怪奇」へ続く。
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