「夏をなくした少年たち」
新人を対象とした公募文学賞の「新潮ミステリー大賞」で、第3回大賞を受賞した「夏をなくした少年たち」。
新潟県在住の「生馬直樹」氏が書いた、ミステリー小説である。
「小学6年生の少年たちが、そこまで考えたり出来るのか?」
との疑念を抱くことも多いが、瑞々しく少年たちの心や人柄を描いた、秀作だと思う。
私の日記(ブログ)を愛読してくださっている方からのリクエストも有って、ネタバレ粗筋を書いておこうと思う。
読んでやってください。
第一部 少年時代
<地域の紹介>
かつての越後国(現在の新潟県本州部分)は、
政治や経済の中心(京都や大阪)に近い方が上との考えで、
今の感覚の逆だけど、南から北に向かって、
・南に有る、上越後(かみえちご)=今の上越、
・真ん中に有る、中越後(なかえちご)=今の中越、
・北に有る、下越後(しもえちご)=今の下越、
と呼ばれていた。
この小説の背景になっている「燕市」は、
下越地区の下に有り、県庁所在地である新潟市の隣下に実在する。
また、
・小説の中で事件が起きた「彦矢町」は、
実在としては、「燕市」の左隣に有る「弥彦村」で、
・彦矢山=弥彦山(実在)、
・彦矢神社=弥彦神社(実在)、
として実在するし、観光地としても有名なんだそうな。
ただ、田舎を舞台としているので、殺人も有る内容から、
実在地に配慮してか、名前を変えたようだ。
因みに、彦矢山は、
・標高は、約700mで、
・彦矢神社裏から山頂に繋がる登山道も有り、
・車で山頂まで行けるエアーラインと言う自動車道も有り、
・山麓駅から山頂駅まで5分のロープウェイも有り、
・9合目の山頂には、
展望台やレストラン、小さな遊園地も有る、
観光名所となっている。
<4人グループ>
新潟県燕市に住む、
・ハンサムで、勉強もスポーツもトップクラスの「紀本 啓」、
・転校生で、
気が弱いが、妹を心から愛する優しい「三田村 国実」、
(妹は、4歳の「三田村 智里(ちー)」)
・粗暴で自己中心的な「榊 雪丸」、
・主体性が無いが、グループのつなぎ役「梨木 拓海」、
の4人グループだ。
が、お互いが信頼し合う関係ではない。
グループ内をギクシャクさせるのは「雪丸」で、
デブで粗暴で人気が無い「雪丸」は、
何でもトップクラスになる「啓」に対抗心と嫉妬を抱いて、
何かに付けてぶつかり合う。
また、何よりも妹の「智里」を大切にする「国実」に、
「妹を連れて来ると、俺たちの行動が制約される。」
と、目の敵にしている。
この「雪丸」のこだわりとイライラが、事件の発生を呼び込む。
<東堂聖剣の存在>
4人グループの2学年先輩で、
現在中学2年生の「東堂 聖剣」と言う男子が居る。
中学2年生で、既に180cmにもなるほどの大柄の上、
異常な行動で、世間の眉を顰めさせている存在である。
そして、その「聖剣」が、何故か、4人グループを付け回すのである。
<最初の事件>
夏休みに入り、祭で遊んでた4人グループは、
「智里」も連れて、夜に、小学校のプールに侵入する。
「闇プール」だ。
そして、遊び戯れている時、プールの周りに植えてある
檜(ヒノキ)の生垣にが燃え出す。
いつの間にか近付いていた「聖剣」が、
ライターで火を点けていたのだ。
巻き添えを食いたくない4人が逃げ出すが、「聖剣」は逃げない。
そこで、「拓海」が、
「逃げないの?」
と「聖剣」に尋ねると、「聖剣」は、
「俺には逃げられる場所なんて無いから。」
「お前は、早く逃げろ。」
と小石をぶつけて追い払おうとした。
逃げた5人が集会所の陰に隠れ、見付かるが、啓が、
「祭を抜け出して、小学校の遊具で遊んでたら、
聖剣君が来て、プールの周りの木に火を点けて。
怖いし、一緒に居て疑われるのも嫌なので、
走って逃げて、集会所に隠れていたんです。」
と弁解し、それを信じた大人たちは、5人を、
「事件に巻き込まれた可哀想な子どもたち」
と受け取り、却って同情を受けるのだった。
<弥彦山登山計画>
8月25日、小学生最後の夏休みの思い出作りに、
4人の少年たちは、電車に乗って、燕市の隣、
弥彦村の弥彦山に登り、山頂から花火を見る計画を立てる。
「国実」も、この日は妹「智里」を家に残し、駅に合流。
電車が到着し、みんなが乗り込み、ドアが閉まる。
ところが、閉まったドアが再び開き、
「智里」の泣き声と「にーたん、にーたん」の声が聞こえる。
「智里」が追い掛けて来たのだ。
「雪丸」は、「智里」を連れて行くことに反対するが、
「国実」は、責任を持って妹の面倒を見るからと頼み込む。
それに対して、「雪丸」は、
「絶対に妹を泣かせるなよ。泣いたら、俺の言うとおりにしてもらう」
と言う。
そして、「雪丸」は、
同じ電車の、隣の車両に、「聖剣」が乗っていることを教える。
みんなは不安になるし、「啓」は、「聖剣」が自分を狙っていると、怯える。
<弥彦山登山>
最初に、「弥彦神社」に着き、登山道入り口を探す。
しかし、入り口には、「通行止め」の看板が置かれていた。
花火大会の日は、山に登ってバカ騒ぎする若者がいるので、
登山禁止になっているのである。
警告を無視して登山道に入り、
歩き疲れた「智里」を、「国実」と「拓海」が背負い、
2時間以上掛けて八合目に辿り着いた。
その先の九合目には、ロープウェイ山頂駅、展望レストランが有り、
そこから先に、山頂が有る。
<トラブル発生>
それまで大人しくしていた「智里」が、
火の点いたように叫び、泣き始めた。
蜂に刺されたのである。
すると、「雪丸」が、
「そのガキ、ここに置いてけ。
約束だろう。
もしも泣いたら、俺の言うとおりにするって。」
と言い出し、みんなは反対するが、「雪丸」は譲らない。
それに対して、「国実」は、
「智里」を置いて、4人だけで山頂まで上ることにし、
「智里」に言い聞かせる。
そして、怖がり泣き叫ぶ「智里」を残し、山頂に向かう。
<失望>
ロープウェイ山頂駅や展望レストランなどが有る九合目を素通りし、
石段や斜面を登り、とうとう山頂に辿り着いた。
そして、花火大会の花火を見ると、思ったよりも小さく見え、
失望する。
そして、同時に「拓海」は、
「俺たちは、本当は仲良しなんかじゃない。」
「俺たちは、さまざまな場面でばらばらだった。
最初から独りで、四人揃って1つのように錯覚してただけだ。
無理やり友達の振りをしているだけ。」
と気付く。
<倒れていた智里>
「拓海」は、「国実」に、「智里」を迎えに行くよう勧める。
「国実」は駆け下りて行くが、なかなか帰って来ない。
そこで、「拓海」が探しに行く。
急いで下り、八合目に着いても「国実」と「智里」は居ない。
そこで、もう少し下ると、赤い橋の上で、
「国実」が、血まみれになって「智里」を抱いているのを発見。
救いを求めに、更に駆け下りる「拓海」だった。
<倒れている聖剣>
五合目まで駆け下りた時、登山道の真ん中に、
倒れている「聖剣」を発見。
「聖剣」の横には、大きな石が転がっており、
この石で「聖剣」も殴られたのだと考え、
泣き叫びながら、転びながら下山し、助けを求めた。
<事件後>
対応してくれた大人が警察に連絡し、救助が行なわれる。
結果、
・「智里」は、頭を石で殴られ、死亡しており、
・「聖剣」も、瀕死の重傷を負ったが、命は助かり、
しかし、右足が不自由になる後遺症を負う。
と言う結果になった。
そして、警察の捜査にも関わらず、犯人は見付からず、
迷宮入りになった。
その後、
・「国実」は、学校に来なくなり、糸魚川に転校し、
・残りの3人は、バラバラになってしまった。
第二部(20年後)へのリンク
http://komox2.sakura.ne.jp/nou-doku/dokusyo/natuwo-nakusita-syounentati/180910-natuwonakusita-02.htm