「夏をなくした少年たち」


第二部 二十年後

<殺された「聖剣」>
 あの事件から20年後、
「梨木拓海」は、東京に出て、警察官になり、
警視庁杉並署で、刑事を務めていた。

 そんな中、杉並署管内で、殺人事件が発生。
 先輩刑事と遺体を確認しに来た「拓海」は、
・被害者が、自分たちの2学年上だった「東堂聖剣」で、
・縄跳び用のロープで首を絞められて死亡、
・しかし、抵抗した形跡が無いこと、
・背中に、3つの拳(こぶし)大の痣(アザ)が有る、
ことを確認した。

 そして、「聖剣」を殺した人間が誰かに気付き、
「父親が危篤(きとく)」
と、見え透いたバレバレの嘘の理由で休暇を貰い、
刑事でなく一個人として、犯人と対面する為、
地元「新潟県燕市」に帰る。

<「啓」との再会>
 新潟県燕市に帰った「拓海」は、
母から軽自動車を借り、二十年前に事件の有った弥彦山を訪ねる。
 そこで、神社の神職から、
「松枯れ対策の為に、カミキリムシを殺す殺虫剤をまいたので、
 登山禁止です。」
と止められる。
 しかし、車でエアーラインを走り、山頂まで登り、
そこから歩いて下り、「智里」が殺されていた場所を確認する。

 その後、同窓会の幹事をしていた同級生に電話し、
「紀本啓が、交通警備会社の社長をしている」
ことを聞き出し、会社に電話して、
「今は、実家に帰っている」
ことを聞き出す。

 そして、「啓」の実家近くで、「啓」と娘の「七絵」に遇う。
 「啓」の妻は乳癌で亡くなり、「啓」独りで娘を育てていた。

 「啓」を誘い出し、飲みながら、「拓海」は、
・「聖剣」が殺されたこと、
 犯人は、我々の知っている人間の中に居る、
・二十年前、「聖剣」が我々の中の誰かを狙っていたこと、
・「聖剣」が「智里」を殺し、その後で、
 大きな石を投げ上げ、自分の頭に落下させ、
 自分も襲われたように偽装したのではないか、
などを伝える。

<誘拐事件の発生>
 翌日、再び、「弥彦山」に向かおうとした時、
「啓」の母親が、切迫した顔で運転し、燕市に戻る姿を観る。
 そして、山頂にタイヤの跡を、
「智里」が死んでいた赤い橋の上にいくつもの靴跡を発見。

 そこに「啓」から電話が掛かり、
「七絵が誘拐された。」
と伝える。

 「啓」の実家に着き、
・「啓」の母親が、
 三条市のショッピングモールに買い物に連れて行き、
 トイレに行っている間に、行方が分からなくなった。
・七絵には、「啓」の名前と電話番号を書いたメモを持たせているが、
 その電話番号に、男の声で、
 「迷子になっているところを偶然発見した。
  都合が良いので、この子を誘拐しようと思う。」
 との電話が掛かって来た。
ことなどを知る。

 加えて、誘拐犯は、
「女の子の父親と、父親の母との問題を解決すれば、
 女の子は、無事返す。」
と言う。

 「拓海」は、玄関を出る時、
「啓」の母親のウオーキングシューズに着いていた枯葉を採取し、
食品検査センターで成分検査をしてもらい、
ウオーキングシューズに、「弥彦山」でまかれている殺虫剤を確認する。

<誘拐の真実>
 「啓」の実家に戻った「拓海」は、
「お前の母親は、三条市のショッピングセンターに行ってない。
 弥彦山に行っている。
 お前の母親に、本当のことを聞け。」
と進める。

 結果、「啓」の母親は、20年前に「智里」が死んだ時、
息子の「啓」から、何度も何度も「人殺し」と叫ばれ、恨んでおり、
「啓」が娘の「七絵」を連れて来た時、
「この娘が4歳になった時、20年前と同じように、赤い橋で殺してやる。」
と言うのが動機だと判明する。

 では、何で「啓」が自分の母親を「人殺し」と罵ったかだが、
「啓」の母親は、自分たちのパーティを記録する為にビデオカメラを買ったが、
たまたま「聖剣」がする、
・全裸になり、拾ったエロ本でマスターベーションする姿、
・ゴミ箱をあさって見付けた玩具や人形で、ごっこ遊びする姿、
などを撮影し、パーティ仲間で披露し、大はしゃぎし、
「聖剣」の母親を苦しめ、苦しむ母親を観た「聖剣」は、
首謀者の息子「啓」を、復讐の為に付け狙うようになり、
その結果、「智里」が殺されてしまったからである。

<誘拐犯の判明>
 再び、誘拐犯から電話が掛かり、
「弥彦山に登っていたら、眠りこけている女の子を発見。
 初老の女性が、
  ”これは復讐、殺さなきゃ。”
 と石を拾ったり捨てたりしてたので、
 危機を感じ、女の子を連れ去りました。
 問題が解決したのなら、娘さんを返します。」
と言う。

 それに対して、「拓海」は、
「どうしてそこまでして、女の子を守りたかったのか、
 貴方にとって、今日は特別な日で、智里の命日だから。」
「久し振りだね、クニ。タクミだよ。」
と伝える。

<再会、もう一度4人の結び付き>
 「拓海」と「啓」が「弥彦山」の山頂に行くと、
横一列に並べられた花火が火を噴き上げ、
「七絵」が喜んで踊っていた。

 そして、「啓」、「国実」、「拓海」は、
現実に追いつかれる前に、
20年前の幼かった自分たちを引き戻そうとする。

 4人は、決して独りぼっちの単なる集まりでなく、
心を通わせたグループだったから。


第二部(20年後)の(2=最終)へのリンク

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