「佐藤正午」作
「月の満ち欠け」粗筋
三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生、
その過ぎし日々が交錯し、幾重にも織り込まれてゆく。
この数奇なる愛の軌跡よ!
さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。
これが、某サイトのキャッチコピーである。
純愛なのか、それとも怪奇(オカルト)なのか・・・。
その粗筋を、作者の構成順に書くとやっぱり混乱するので、時間、時代の流れに合わせて書いて行く。
その為、作者の構成の意図や、登場人物の心の綾とか愛とかは書けないので怒らないでね。
では、粗筋です。
世界で一番分り易い、「月の満ち欠け」の粗筋です。
<奈良岡瑠璃と正木竜之介>
・「正木竜之介」は、長身で格好良く、とても優秀な男で、
大手工務店に採用され、一級建築士の資格も取り、
エリートの道を順調に歩いていた。
・そんな中、喫煙具店に勤めていた「奈良岡瑠璃」を好きになり、
猛アタックして結婚する。
・しかし、子どもが出来ないことや、「竜之介」の浮気などから、
心のすれ違いが起き、二人の仲は冷えて行く。
<正木瑠璃と三角哲彦>
・「正木瑠璃」は、結婚しているが、愛の無い生活を送っていた。
・高田馬場で大雨に遭い、レンタルビデオ屋の入り口で雨宿りしていると、
その店でバイトをしていた大学生「三角哲彦」がやって来て、
Tシャツを貸してくれる。
「正木竜之介」の妻「瑠璃」である。
・それがきっかけで二人は付き合いだし、肉体関係も結ぶ。
・初めての愛を知った「瑠璃」なのに、電車事故で死亡する。
・愛する人を失った「三角」も、挫折し、大学卒業に5年掛かる。
<1回目の生まれ変わり瑠璃と正木竜之介>
・妻を亡くした「正木竜之介」は、失意のどん底に落ち、
大手工務店を辞め、小さな工務店に再就職する。
・そして、20年ほど経った時、
働いている工務店の経営者の7歳の孫「希美」に懐かれる。
・ところが、「希美」が、突然、「正木竜之介」を避け始める。
それは、「希美」が、
自分は「瑠璃」の生まれ変わりであることに気付き、
今まで懐いていた「正木竜之介」が、
自分を苦しめた夫だったと思い出したからである。
・そして、「希美=瑠璃」は、「正木」に、
「自分は、瑠璃の生まれ変わりだ。
元々、瑠璃と言う名前を付けられるはずだったが、
瑠璃と言う子の事故が有ったので、祖母が嫌い、
今の名前にされた。」
と伝え、
「自分は、三角に逢いたくて生まれ変わった。」
と伝える。
・それを信じた「正木竜之介」は、「希美=瑠璃」に頼まれ、
「三角」に逢わせてやろうと、連れ出す。
・しかし、その途中、「希美=瑠璃」は飛び出し事故で死亡し、
「正木竜之介」は、少女連れ出し誘拐犯として逮捕され、
失意の内に刑務所で自殺する。
・エリートだった「正木竜之介」は、「瑠璃」と言う女性に、
二度も人生を曲げられた気の毒な男で、
その視線に立てば、「瑠璃」は許されない人間である。
<2回目の生まれ変わり瑠璃と小山内堅>
・小山内堅は、八戸市の出身で、石油商社で働き、
高校時代の後輩であり同僚となった「藤宮梢」と結婚し、
娘「瑠璃」を授かる。
・ところが、その「瑠璃」が、7歳になった時、
高熱にうなされ、回復した後、、
子どもが知るわけもないことを口走り始め、
「自分は生まれ変わりだ。逢いたい人が居る。」
と言い出し、妻の「梢」は、それを信じてやる。
・しかし、そんなことが信じられない「小山内堅」は、
高校を卒業したら好きにして良いと行くことを待たせる。
・高校卒業まで成長した「瑠璃」と母「梢」が「三角」に逢いに行く途中、
交通事故で2人共死亡する。
<3回目の生まれ変わり「るり」と小山内堅>
・娘「瑠璃」と妻「梢」が事故で亡くなってから、
「小山内堅」は、故郷八戸に帰っている。
・そして15年経った時、
子どもの頃に「小山内堅」の娘「瑠璃」と親友だった、
今は有名女優の「緑坂ゆい」が、
娘を連れて「小山内堅」に逢いに来る。
・「小山内堅」に会った「緑坂瑠璃」は、
自分が「小山内堅」の娘「瑠璃」の生まれ変わりだと告げ、
色々と証拠を伝える。
<るりと三角の再会>
・女優である母「緑坂ゆい」が九州へ撮影に行っている間、
小学生の「るり」は、大手の建設会社の総務部長まで出世している
「三角哲彦」に会いに行く。
・不審に思い「三角部長」に会わせてくれない大人を振り切り、
エレベーターに乗ろうとしたが、掴まる。
・「るり」は、
「お願い、アキヒコ君に会わせて!」
と叫び、大人たちは固まる。
・その時、一人の男性が「るり」の前に膝間付き、
「瑠璃さん、ずっと待ってたんだよ。」
と声を掛ける。
<もう1つの生まれ変わり「梢=みずき」
この小説最大の衝撃!>
・「緑坂」親子に呼ばれて、「三角」にも会う為、
東京に出て来た「小山内堅」は、
東京駅の近くのホテルのラウンジで親子に会う。
・「るり」は、再び、生まれ変わりを主張する。
・「三角」は来るのが遅れて、会えないまま、
八戸に帰る新幹線の時間が迫る。
・「緑坂ゆい」が電話している時、「るり」が、
「梢」の秘密を、「小山内堅」に伝える。
「小山内堅」の妻「藤宮梢」は、
高校時代の憧れの先輩「小山内堅」を追って、
東京の「小山内堅」のいる大学に入り、
偶然を装って、同じサークルに入り、親しくなり、
卒業しても交際を続け、妊娠し、結婚する。
・しかし、「梢」はそのことを「小山内堅」には伝えないまま、
高校を卒業したばかりの娘の「瑠璃」と「三角」に逢いに行き、
交通事故で亡くなる。
・「梢」が高校時代から自分を慕ってくれていたなら、
「何故、妻は僕にそのことを打ち明けなかったのか?」
と疑問に思った「小山内堅」に対して、
「梢」の娘だったこともある「緑坂るみ」は、
「ママがそれをパパに打ち明けると、
パパはつけあがるから。」
と、「梢」の口調を真似て伝える。
・そして、帰りの新幹線の時間が近付き、
改札口に向かう「小山内堅」に、「緑坂るり」は、
「愛した人に逢いたくて生まれ変わるのは、私だけじゃない。
小山内さんを、”堅”さんと呼ぶ子が居たら、奥さんかも?」
と伝える。
・帰りの新幹線に乗る為に、東京駅の中を歩く時、
「小山内堅」は、「緑坂るり」の言葉を思い出し、
ある事実に気付き、雑踏の中で棒立ちになり、
キャリーバッグの車輪が踵(きびす)に当たり、
痛みにうずくまりながら考える。
・八戸に帰り働き始めた「小山内堅」は、
父親の為の紙おむつを買いにドラッグストアに寄るが、
当て逃げ事件の目撃者同士と言うことで、
ドラッグストアのレジにいる「荒谷清美」と
7歳の娘「みずき」と親しくなる。
・その時、「清美」が、
「小山内さんのことは、前から知っていた。
この子が、先に、小山内さんを見分けていた。」
と伝えると、「みずき」は、
「言っちゃダメ、って言ったのに。」
と舌打ちする。
・そして、「みずき」は、「小山内堅」のことを、
「堅さん」と呼ぶようになる。
・ひょっとして、自分のことに最初に興味を持ったのは、
母親の「清美」ではなく、「みずき」ではないのか?
「みずき」は、最初から自分と母親が「小山内堅」に
近付くようにしていたのではないのか?
・「みずき」が元の妻「梢」の生まれ変わりなら、
これから、どう接して行ったら良いのか?
・自分は、「荒谷清美」と再婚するだろう。
そして、「みずき」は義理の娘になるだろう。
その時、「みずき=梢」とどう向き合うのか?
「小山内堅」は苦悶する。
以上が、「月の満ち欠け」の時間の流れに沿って書いた粗筋である。
元の小説は、時間が現在から過去、現在から途中、へと切り替わるので、全容が掴みにくい。
しかし、私の書いた粗筋だと、スムースに流れが読めたと思う。
最後まで読んでくださり、有り難うございました。