「オーパーツ 死を招く至宝」の粗筋とネタバレ
第16回、2017年の「このミステリーがすごい大賞」を受賞した、
・蒼井碧(あおいぺき)著作の、
・「オーパーツ 死を招く至宝」
を読んだので、粗筋とネタバレを書いておく。
なお、「オーパーツ」とは、
・その物質が発見された場所や作られた古い時代では、
場所的にも技術的にも、作るのは不可能で、
全くそぐわない、理解出来ない、
・人工的に作られた物で、
・英語の
out-of-place-artifacts
を略して「OOPARTS」とした、
ものである。
また、「オーパーツ」として有名な物は、
1 工芸品としては、
・アステカなどで発見された水晶で作られた髑髏(ドクロ)、
・コロンビアで発見された黄金製のスペースシャトル、
・コスタリカの真球に近い石の球、
2 遺跡としては、
・ナスカの地上絵、
・イースター島のモアイ像、
・イギリスのストーンヘッジ、
・ペルーのマチュピチュ、
などが有る。
では、粗筋などを。
<出会い>
〇国内序列1位の大学の法学部に入学した、
1回生で貧乏学生の「鳳水月(おおとりすいげつ)」。
〇彼の前に、これまた1回生の「古城深夜(こじょうしんや)」が現れる。
〇彼らは、双子かと思われるほどそっくりな姿形をしている。
これが重要。
〇自らは「オーパーツ鑑定士」と名乗る「古城」は、
”オーパーツの鑑定で忙しく、授業に出られない。”
”お金を出すから、僕に成りすまして、授業(講義)に出て、
出席日数を増やしてくれ。”
と頼んでくる。
〇奨学金とバイトの掛け持ちで生活している貧乏学生の「鳳」は、
1授業(90分)を1万5千円で請け負う。
〇そして、二人が受講する授業をずらして、両方に「鳳」が出席し、
バレずにやって来た。
<髑髏邸への招待>
〇「古城」から「鳳」に、
”或る大御所から、オーパーツに関わる鑑定依頼で、
別荘に招待されているので、僕の辣腕を見に来てほしい。”
と声を掛けられ、「髑髏邸」に行くことにする。
〇別荘は、長野県の湖畔に在り、
大御所は、水晶で作られた髑髏を収集している「財前龍之介」博士で、
髑髏は200個にもなると言う。
〇別荘には、
・持ち主の「財前」博士、
・息子の「財前虎太郎」、
・獣医の「高杉良平」、
・博士の専属セラピスト「白峯薫」、
が集まっており、「古城」と「鳳」を合わせて6人となった。
〇「古城」が「財前」博士に招かれたのは、
世界中に13個有ると言われている特別な水晶の髑髏を、
「財前」博士が、13個とも集めたからで、
その鑑定の為に招かれたのだと言う。
〇お披露目は翌日になり、一日目の夜は前夜祭となり、
息子の「虎太郎」は、
得意のビリヤード(撞球=玉突き)の腕前を披露し、
みんなを感心させたりする。
(これが、この物語のポイント)
飲めない「鳳」は、ワイン1杯で意識不明となる。
<財前博士の死>
〇「鳳」は、
”財前博士の様子がおかしい”
と「古城」に叩き起こされ、
2階の1室の前に連れて行かれる。
〇そして、猫の「スフィンクス」の出入り用に作ってある、
ドアの下部の小さな扉入り口から覗くと、
・緑青色や紫やピンクなどの髑髏が床に置かれ、
・中央の机の上には、白衣を着た財前博士らしき人が横たわり、
しているのが見えた。
〇中に入ろうにも、鍵が掛かっており、
その鍵は「財前」博士が持っているだけしかないので、入れない。
〇そこで、男どもが力を合わせてドアに体当たりをし、ドアを破り、
中に入って確かめると、財前博士の腹部に、
刃渡り30cmも有るような巨大なサバイバルナイフが刺さり、
財前博士は死んでいた。
〇そして、シャムネコのスフィンクスも刺されて死んでいたのだ。
〇加えて、13個の色とりどりの髑髏が、
財前博士の遺体を囲むように、並んでいたのだ。
<古城の推理 殺人犯の特定>
〇「古城」が観察するに、13個の髑髏は、時計回りに、
鍵束、腕時計、ハサミ、万年筆、指輪、印鑑・・・
などを咥えさせられており、儀式のように思えた。
〇また、唯一、部屋のドアを開けられる鍵は、
ドアから一番離れた奥に配置された透明の髑髏が咥えてたので、
部屋へ入れない。密室殺人だ。
〇そこで、「鳳」が、
”自殺ではないのか?”
と聞くと、「古城」が否定する。
そのわけは、
”13個目の髑髏は、中心に配置されていなければならないのに、
それも、周りに並べられていたから、
儀式のルールを知らない者の仕業である。”
と言うことだった。
〇そして、「古城」は、
”犯人は虎太郎だ。”
と断定する。
<密室殺人のトリック>
〇結論を先に書けば、
「財前」博士を殺害したのは、息子の「虎太郎」だった。
そして、その理由は、ギャンブルで大損した所為で、
早急に大金が欲しく、遺産狙いだったのである。
〇では、密室殺人のトリックはどうだったのかと言うと、
「虎太郎」は、
1)父「財前」博士を殺し、猫も殺し、
2)床に、ワックスを塗り、滑り易くしておいて、
3)遺体を机の上に乗せ、
4)12個の水晶の髑髏を、一番奥だけ空けておいて、
遺体の周りに円形に並べ、
5)透明な水晶の髑髏に鍵束を咥えさせて、
ビリヤードのキュー(棒)で突いて、
ワックスで滑り易くなった床を滑らせ、
一番奥の位置に配置させて、密室にした。
6)ネコまで殺したのは、
”せっかく並べた髑髏をネコが動かすと困るから”
であった。
〇「古城」がこの推理に至った理由は、
”一番奥に配置されてた透明の水晶の髑髏に、
ビリヤードで球を突く時に、キューと球が滑らないように、
キューの先に粉を着けるのだが、
その粉が、透明の髑髏にだけ着いていたから”
である。
〇なお、「財前」博士は、
”遺産をセラピストの「白峯薫」に、全額譲る”
と言う遺言状を書いていたらしい。
〇そんないきさつの最後に、「鳳」は、
こらえていた二日酔いのゲロを吐き、ゲロだらけになり、
憧れていた「白峯薫」から、汚物を見る目で見られる。
<私の感想>
〇確かに、密室殺人に仕立てた物理的なトリックは、
なかなか素晴らしいと思う。
〇しかし、最近の私は、
登場人物の心のひだを書いた本に親しんでいるので、
その点では、全く持って不満だった。
そんなわけで、
トリック面では◎、
表現面では△、
の評価を点ける私だ。