蜜蜂と遠雷 触り

 この小説の粗筋なんて、とてもじゃないが書けるわけが無い。
 あまりにも大作で、緻密な描写なので、どう書いても追い着かないからだ。

 そこで、触りだけでも書いておくことにする。


<「ユウジ・フォン・ホフマン」の死>

 世界中のピアニストから、尊敬と畏敬を捧げられていた、伝説のピアニスト「ユウジ・フォン・ホフマン」が、病死した。
 死が近いと感じた「ユウジ・フォン・ホフマン」は、t知人に、
「僕は、爆弾をセットしておいたよ。
 僕がいなくなったら、ちゃんと爆発するはずさ。
 世にも美しい爆弾がね。」
と語ったそうな。

 その美しい爆弾が、いよいよ爆発する。

<芳ヶ江ピアノコンクール地区予選>

 日本の芳ヶ江で行なわれる、三年に1回のピアノコンクールは、ここで優勝した者が、その後の著名コンクールで優勝するパターンが続いたことから、新しい才能が現れるコンクールとして、世界中から注目されるようになったコンクールである。

 そして、日本の「芳ヶ江」で行なわれるコンクールの出場者は、先ず、モスクワ、パリ、ミラノ、ニューヨーク、芳ヶ江で行なわれる地区コンクールを経て、100名ほどのコンテスタント(コンテスト出場者)が選ばれ、選ばれた者が、日本の「芳ヶ江」に来て、一次予選に参加することになる。

 そのパリでの地区予選会の審査員に、日本人ピアニストで、「ユウジ・フォン・ホフマン」を心から慕い尊敬し、自らの才能も「ユウジ・フォン・ホフマン」に認められた「嵯峨三枝子」がいた。

 その「嵯峨三枝子」の前に、
・音楽学校などで正式なピアノを習ったこともなさそうな、
・しかし、殆ど白紙に近い履歴書に、唯一、
 「「ユウジ・フォン・ホフマン」に五歳より師事」
 と書かれている
・「風間 塵」と言う名の16歳の少年が現れ、
ホールにいた全員を圧倒する、信じられない演奏を行なう。

 それに対して、「嵯峨三枝子」は、
 「悪魔のようだ。おぞましい。恐ろしい。」
と感じ、
 「許せない。ホフマン先生に対する冒涜だわ。
  私は、絶対にあの子の合格には反対する。」
と、怒りに震える。

 しかし、残りの審査員仲間と打ち上げで飲んでいる時に、「ユウジ・フォン・ホフマン」の推薦状を見せられ、「嵯峨三枝子」は、衝撃、混乱、羞恥心、屈辱感に打ちのめされる。
 その推薦状には、
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「皆さんに、カザマ・ジンをお贈りする。
 文字通り、彼は『ギフト』である。恐らくは、天から我々への。

 だが、勘違いしてはいけない。
 試されているのは彼ではなく、私であり、皆さんなのだ。
 彼を『体験』すればお分かりになるだろうが、
 彼は決して甘い恩寵などではない。
 彼は劇薬なのだ。

 中には彼を嫌悪し、憎悪し、拒絶する者もいるだろう。
 しかし、それもまた彼の真実であり、
 彼を『体験』する者の中にある真実なのだ。

 彼を本物の『ギフト』とするか、それとも『災厄』にしてしまうのかは、
 皆さん、いや、我々にかかっている。
                      ユウジ=フォン・ホフマン」

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と書かれており、「嵯峨三枝子」は、正に「ユウジ・フォン・ホフマン」が予見したとおりの反応を示したからである。

 「嵯峨三枝子」は、自分が、「風間 塵」に嫉妬していることを感じる。
 「ユウジ・フォン・ホフマンに五歳より師事」
と言う、たった一行を、自分の経歴にどれほど書きたかったのか、を思う。

 世界中のピアニストが、どんなに遠くからでも、「ユウジ・フォン・ホフマン」の指導を受けたくて通うのに、「風間 塵」に対しては、「ユウジ・フォン・ホフマン」自らが少年の元に通い、指導をしていたと言う。

 そして、この少年は、
・養蜂家の父と共に移動を繰り返し、
 その為、正規の音楽教育も受けていず、
・また、自分のピアノを持っていず、
 出掛けた場所に有るピアノが有ると、
 嬉々として触れて演奏する。
と言う情報も伝わって来た。

 混乱する「嵯峨三枝子」だが、他の審査員に押し切られ、「風間 塵」は、パリ地区予選に合格し、日本で開かれる「芳ヶ江国際ピアノコンクール」の一次予選に出場することになる。


<予選参加者>

1)伝説の消えた天才少女「栄伝 亜夜」
2)大手楽器店に勤めながらピアノを諦められない28歳の「高島 明石」
3)日系三世のペルー人を母に持ち、アイドルのような「マサル」
4)「風間 塵」
を中心に、その他のコンテスタント(コンテスト出場者)や周りの人たちの、苦悩、喜び、そして演奏の素晴らしさを書き上げている。

 機会と時間が有ったら、続きを書こうと思う。