「検察側の罪人」の粗筋とネタバレ

 司法試験に受かった者は、研修を受けた後、
〇裁判官、
〇検察官(検事)、
〇弁護士、
の道に進む。

 この3者は、正義を行なう為に存在すべき者たちである。
 しかし、・・・・・・・・。


<師弟関係>
〇司法試験に合格し、「司法修習生」になった者たちは、
 全国に散らばっての「実務修習」に行く前に、
 「導入研修」を受ける。
〇検察官を目指す「沖野圭一郎」は、
 指導教官である「最上毅」の最後の激励の言葉に、
 感動を覚え、ますます検察官になりたいと決意する。
〇5年後の2012年。
 地方地検支部の勤務を経て、昨年、東京地検に移って来た「沖野」は、
 今年から、「最上」も居る刑事部に配属された。

<殺人事件の発生>
〇大田区蒲田で、
 年金のほかに、アパートの家賃収入で生活をし、金貸しも行なっていた、
 74歳の都築和直と71歳の妻晃子が、刺殺される事件が有り、
 「沖野」は「最上」の指導の元、捜査本部事件を担当することになる。
〇都築和直はギャンブル好きで、競馬場などで知り合った仲間に、
 数十万円ほど貸しており、その仲間が疑われ、
 7名ほどが、取り調べを受けることになる。
〇そして、特に疑わしき者として、「松倉重生」と「弓岡嗣郎」が居た。

<最上の怒り>
〇今から23年前、学生だった「最上」は、
 司法学生仲間と「北豊寮」と言うアパートに住んでいたが、
 管理人の娘である中学2年生の「久住由季」に懐かれ、
 妹のように可愛がっていた。
〇その「久住由季」が、自分の部屋で何者かに襲われ殺された時、
 一番疑われたのが「松倉重生」だったが、
 証拠不十分で立件されなかったことが有る。
〇その怒りを密かに持ち続けて来た「最上」は、
 「松倉」に昔の罪を償わせたくて、
 どうしても、今回の老夫婦刺殺事件の犯人として、
 起訴したいと願う。

<松倉重生の自供>
〇警察は、「松倉」を最重要容疑者として厳しく取り調べをし、
 検事も取り調べを分担することになり、
 「最上」は、「沖野」に厳しい取り調べをさせる。
〇「松倉」は、時効となっている23年前の「久住由季」殺しは自供するが、
 今回の老夫婦殺害は否定する。
〇「松倉」の自供によると、
   ・神社で写生をしていた「久住由季」を襲い、レイプしようとするが、
    激しく抵抗され、その内、人が来たので諦めた。
   ・その後、アパートに住んでいる遊び仲間を訪ねた時、
    一人でいる「久住由季」を襲うが、
   ・「久住由季」が、前回のことを警戒してスパナを持ってて、
    それで殴ったりして抵抗したので、首を絞めて殺した。
 と言うものだった。
〇「最上」は、ますます「松倉」を老夫婦殺害犯として起訴しようと決意する。

<最上の殺人>
〇捜査が進む内、「弓岡嗣郎」が殺害を仄めかすようなことを、
  遊び仲間に話していたことが明らかになる。
〇このままでは「松倉重生」を起訴出来ないことになることを恐れ、
  「最上」は、「弓岡嗣郎」に電話し、
   ・俺は味方だ。
   ・老夫婦殺害の容疑者として逮捕される。
   ・今の内に逃げろ。
 とそそのかす。
  そして、箱根の無人の別荘におびき出し、
   ・殺害の凶器である包丁を受け取り、
   ・裏社会の者から購入した拳銃トカレフで撃ち殺し、
   ・別荘の裏に埋める。
 のであった。
〇その後、「弓岡嗣郎」から受け取った包丁を、
  「松倉重生」の持っていた新聞で包み、河原に捨て、
  匿名で、包丁が落ちていると、警察に連絡し、
  「松倉」が容疑者として逮捕されることになった。

<沖野の決意>
〇「松倉重生」を取り調べていく内、「沖野」は、
  どうしても、「松倉重生」が犯人だとは思えなくなる。
 そして、「最上」に、
  ”昔の女子中学生殺害事件の捜査担当だった「田名部」さんが、
   弓岡から凶器の包丁を受け取り、姿をくらますよう、
   指示したのではないか”
 と言ってしまう。
〇結果、「沖野」は、老夫婦殺害事件から外され、
  起訴担当検事は、「最上」に移される。
〇「沖野」は、検事を辞職する。
〇「沖野」は、「松倉重生」の国選弁護人に選ばれた「小田島」に会い、
  検察側の強引な起訴について説明し、戦い方をアドバイスする。
〇「沖野」は、老夫婦殺害事件を特集記事にして追っ掛けている
  「週刊平日」の「船木」と会い、自分の考えを伝える。
〇「沖野」が「小田島」弁護士と打ち合わせをしていると、
  人権擁護派で名前を売っている「白川」弁護士が入って来て、
  弁護団に入れてほしいと提案する。

<最上の逮捕>
〇「最上」が「弓岡」を殺害した別荘の持ち主が、
  掃除中にトカレフの薬莢を見付け、警察が調べた結果、
  埋められていた「弓岡」の遺体が発見される。
〇「沖野」は、「最上」が、自分を二日間ほど捜査から外したが、
   ”それは自分を休ませる為ではなく、
    最上自身が自由に動ける時間を作る為だったのではないか?”
  との疑問を持ち、「週刊平日」の「船木」記者に、
   ”最上が、23年前に殺された女子中学生の両親が管理していた
    北豊寮に住んでいたか?”
  調べてもらう。
〇結果、
   ・「最上」が、北豊寮の住人だったこと、
   ・「最上」が、箱根の叔父の家を訪ね、車を借りたこと、
  などを知らされ、
   ”「弓岡」を逃亡させ、凶器の包丁を手に入れ、殺したのは「最上」”
  だと確信する。
〇「沖野」の確信を信じた「船木」記者は、「週刊平日」に書き、
  「最上」は、上部の追及を受け、
  「最上」が箱根を、車でに異動していることなどがNシステムなどで確認され、
  最後は逮捕される。

<終わりに>
〇釈放された「松倉重生」は、
   ・23年前の女子中学生殺害の自供を打ち消し、
   ・刑事や検事に、脅かされ、騙されて、
    やってないのに嘘の自白をした。
  などと、被害者であることを誇張する。
  そして、「沖野」に、
   ”この検事が、俺を苦しめた。”
  と、唾を吐き掛ける。
〇「松倉重生」の不起訴を勝ち取った人権派弁護士の「白川」は、
  「沖野」に金を渡し、
   ”今回の事件では手弁当だったが、名声を高められた。
    正義は、金になるんだよ。”
  とうそぶく。
〇勝利を手に入れた「沖野」は、割り切れない気持ちで、
 「最上」が収監されている拘置所に面会に行く。
  そして、
   ”自分が、最上さんの弁護人をやりたい”
  と願い出るが、「最上」は、
   ”同級生で弁護士をしている者が、してくれる。”
  と断り、
   ”君に、検事を辞めさせることになって済まなかった。”
  と詫びる。
〇拘置所を出た「沖野」は、慟哭する。