怪物の木こり 粗筋とネタバレ
第四部「脳泥棒の正体」



 小説の構成は無視して、時系列で並べてあります。


<それぞれの疑問と調査>

・「二宮彰」と「杉谷九朗」は、
 「東間翠」が人体実験をしていた「東間館」を調べに行き、
 近所に住み、事情を知っていた「堀口修」に話を聞く。
・「堀口修」は、
  ”「東間夫婦」の息子がサイコパスだった。
   サイコパスの原因を調べようとしたのかも?”
 などとを庇うようなことを言いながら、息子を呼ぶ。
・息子は、子どもの頃、「東間館」でニット帽を被った子どもと話し、
 その子どもが、「怪物の木こり」と言う絵本を持っていたと教える。

・「東間夫婦」の支援者「金木満治」が殺されていて、
 手掛かりを失った捜査陣は、行き詰まる。
・そんな中、科警研プロフィラーの「栗田」は、
  ”「金木満治」は、自分の娘をサイコパスに殺され、
   「東間夫婦」の人体実験に協力し、
   児童養護施設への多額の寄付をしながら、
   脳チップを埋めて捨てた子どもたちの成長を観察していた。”
  ”途中で千葉に移住したのは、孫が生まれ、生きる喜びを得て、
   捨て子たちへの監視を止めたのだろう。”
  ”脳泥棒連続殺人発覚の前までは、
   遺体を千葉まで車で運んだりしていたのに、
   何故、遺体を捨てたままにするようになったのか?”
  ”何故、脳泥棒は、協力者「金木満治」の居所や
   捨て子たちの細かな情報を手に入れられたのか?”
 などと考察する。

・また、
  ”「東間夫婦」が逮捕された時に救出された4人の子どもたちの中、
   「石川真澄」「岩田三郎」「満田義男」の3人が殺されたのに、
   「剣持武士」だけが残っている。”
  ”シリアルキラー(連続殺人犯)である脳泥棒が、
   一番殺したいのは「剣持武士」ではないか?
   シリアルキラーは、一番殺したい本命を残しておいて、
   本命に似ている人間を次々殺して行くことが多い。”
 と分析する。
・加えて、
  ”「剣持武士」は、警護に来た「戸城嵐子」などに、
    『脳泥棒がどこの誰かも分かっていないお前らに何が出来る。
     自分で殺しに行く。』
   と言っていたことから、「剣持武士」は脳泥棒が誰かを知っている。”
 と分析する。

・そんな中、「剣持武士」が行方をくらます。


<脳泥棒との対決>

・銀座の高級蕎麦屋に「映美」と来る予定だったのに、「映美」は、
  ”年末年始はバイト代が高いから嫌。”
 と断り、仕方無く弁護士事務所の「手塚」と蕎麦を食べていた。
・すると、携帯電話が鳴り、メールを開くと、
 猿轡をされて縛られている「映美」の姿が映っていた。
・メールには住所が書かれていたが、
 そこは、「東間夫婦」の支援者だった「金木満治」の会社が持つ、
 別荘だった。
・別荘に入ると、携帯電話が鳴り、
  ”服を脱いで裸に成れ。手錠で手を階段の手すりにつなげ。”
 と言う。
・それに対して、「二宮彰」は、服を脱いで裸になったが、手錠はせず、
  ”「映美」の姿を見せろ。”
 と言うと、マスクを被り、手斧を持ち、「映美」を引きずって、
 脳泥棒が、階段上の二階に姿を現した。

・「二宮彰」は、脳泥棒に、
  ”お前からのメールが来て、お前が誰かが分かった。”
  ”一ヶ月前の俺なら、「映美」が誘拐されて殺されても平気だった。
   それなのに、お前は、俺が「映美」を助けに来ると分かっていた。”
  ”お前は、そのマスクのとおり、怪物の木こりだったんだよ。”
  ”怪物の木こりは、自分と同じ怪物を次々と作っていたが、
   それと同時に、普通の人間として生きたいとも思っていたんだよ。”
  ”お前は、俺が「映美」を見殺しにしないと分かっていたのは、
   俺と同じ経験、即ち、脳チップが壊れたサイコパス。
   普通の人間の心を取り戻した怪物、「剣持武士」さん。
 と告げる。

・続けて、「二宮彰」は、
  ”脳チップが壊れて、フラッシュバックが起き始めると、
   それまではただのオッサンしか思えない「金木満治」も、
   「東間夫婦」の協力者だったと思い出す。”
  ”「東間夫婦」が逮捕された時に救出された4人の内、
   3人が殺されているのに、唯一お前だけが生き延びている、
   その不自然さが、お前が犯人だと教えている。”
 と伝える。


<剣持武士の苦悩に涙が出る>

・「二宮彰」は、
  ”分からないのが、動機だ。
   同じ誘拐され脳チップを埋め込まれた被害者たちなのに、
   何で、俺たちを皆殺しにしようとするんだよ。”
 と問い質すと、「剣持武士」は、
  ”決まっている。お前ら怪物は、死ぬべきだからだ。”
 と言い切る。

・そして、「剣持武士」は、「二宮彰」に、
  ”早く手錠を掛けろ。でないと、この女を殺すぞ。”
 と脅す。
・それに対して、「二宮彰」は、
  ”お前には出来ない。
   お前が殺せるのは、俺たちサイコパスだけだからな。”
 と言い返し、「剣持武士」は動揺する。

・言い合っている「剣持武士」の背後に、「杉谷九朗」が忍び寄り、
 注射器の針を、「剣持武士」の首に突き刺し、「剣持武士」は倒れる。

・椅子に縛り付けた「剣持武士」に、「二宮彰」は、
  ”脳チップを埋められた子どもたちのデータを渡せ。”
 と迫ると、「剣持武士」は、
  ”俺を殺し、脳チップを壊してくれるなら渡す。”
 と答え、二階の金庫の暗証番号を教え、「杉谷九朗」が確認する。

・「二宮彰」が、
  ”脳チップが壊れて普通の人間に戻って良かったか?”
 と聞くのに対して、「剣持武士」は、
  ”最初、妻の「咲」を殺した時は、何も感じなかった。”
  ”しかし、脳チップが壊れて、あらゆる感情が共有出来るようになり、”
   この世界は、俺一人だけじゃないと知った。”
  ”「咲」が本当に俺を愛してくれていたことも分かった。
   俺が飯を食っている時、どうして「咲」が笑っていたのか、
   俺が怪我をした時、「咲」がどうして辛そうな顔をしていたのか、
   人の心を感じるようになる度に、その理由を知った。”
  ”しかし、それを知るのは絶望でもあった。
   「咲」を殺したのは俺で、俺は、自分の人生の意味を殺したんだ。”
 と答える。
・重ねて、「二宮彰」が、
  ”それでも、人間に戻って良かったと思うか?”
 と聞くと、「剣持武士」は、
  ”俺なりに人の心に触れられて良かったと思っている。
   そうでなければ、「咲」の気持ちを知ることは出来なかった。
   俺は、人生の意味に触れることが出来たから。”
 と答える。

・「剣持武士」の気持ちを確認した「二宮彰」は、
 ナイフを置き、手斧を持って来て、「剣持武士」の頭に当て、
  ”これで良いんだな?”
 と確認すると、「剣持武士」は、
  ”話を聞いてくれてありがとう。後は頼む。”
 と答える。
・それを聞き、「二宮彰」は、
  ”分かった。それじゃあ、おやすみ。”
 と、斧を振り上げ、「剣持武士」の脳を破壊する。


<剣持武士の遺体発見>

・「剣持武士」が疾走してから四日後、
 脳が破壊された「剣持武士」の遺体が発見される。

・科警研プロフィラーの「栗田」が、
  ”脳泥棒は、「剣持武士」だっただろう。”
 と言うのに対して、「戸城嵐子」は、
  ”まさか。
   「剣持武士」は、脳泥棒に殺されているんですよ。”
 と声を大きくする。
・それに対して、「栗田」は、
  ”「剣持武士」が脳泥棒だとすれば、全ての疑問が解決する。
   「剣持武士」は、次のターゲットに、逆に殺されたのだろう。”
  ”それまでは脳チップを埋め込まれた元誘拐被害者を殺しても、
   車で「金木満治」の別荘などに運んで埋めてたのに、
   遺体をそこらに放置するようになったのは、
   「乾」さんが、保険金殺人容疑で「剣持武士」を追い回し、
   Nシステムで、車の行き先を調べられる恐れが有ったから。”
 と答える。

・加えて、
  ”「剣持武士」の脳内の脳チップが、何らかの理由で壊れ、
   人間の心が戻って来て、
   妻の「咲」を殺した自分自身を許せなくなって、
   自分と同じ脳チップを埋められてサイコパスになった元捨て子を
   この世から消したかったのだろう。”
 と言う。

・いつ、「剣持武士」の脳チップが壊れ、
 いつから人間の心を取り戻し始めたかだが、
 「乾登人」が、
  ”俺が、「剣持武士」を殴ってからか?”
 と答える。
 確かに、「剣持武士」は、
  ”「乾に殴られてから、調子が悪くなった。」”
 と、訴え掛けていたことが有ったからだ。

・「剣持武士」の遺体が発見されて以降、
 脳泥棒殺人事件は、起きなくなった。