それからの上条桂介


<順調な生活>

・東京大学文化二類(経済学部)に入学した上条桂介は、
 進学塾の講師のバイトも得て、順調に生活し始めた。

・新宿に出た「桂介」は、
 「向日葵(ひまわり)」が描かれた「ゴッホ」の画集を購入した。
・「桂介」にとって、母の面影が「向日葵」に結び付くからだ。
・白い日傘を差して道にたたずみ、ヒマワリの群生を観る母は、
 「桂介」にとって、忘れられない思いなのである。


<躓き>

・東大に入学した間際、
 バイトで忙しいので部活動をする余裕も無かったが、
 将棋部を覗いてみて、流れで将棋を指し、
 日本でも屈指の学生将棋サークルの上級生に圧勝する。

・東大に入学し半年ほど経った秋、
 いつもの生活から少しはみ出してみたくなった「桂介」は、
 街中を歩いている内に、将棋道場に入ってしまう。
・そして、出会ってはいけない男「東明重慶」に出会ってしまう。
・「東明重慶」は、
 賭け将棋で飯を食う「真剣師」と呼ばれる将棋指しの中でも、
 歴代最強と言われる男だった。

・「桂介」は、「東明重慶」と将棋を打ちたくて着いて行き、

  中略

・「唐沢」から貰った名駒
 初代「菊水月」が作った、
 名作「錦旗島黄楊根杢盛り上げ駒」
 を「東明重慶」に盗まれ、
 加えて、「東明重慶」は、
 「桂介」を掛け金の形にして勝負した賞金を持って、
 行方をくらませた。

・事情を話して、名駒の返却を頼む「桂介」だったが、
 買い手に断られる。
・しかし、「桂介」が買い戻しに来るまで、
 名駒は売らないことを約束してくれる。

  中略


<事業家としての成功>

・「東明重慶」との縁を切った「桂介」は、
 大学卒業後、外資系企業に就職し、
 贅沢もせず、寝る間を惜しんで働き続け、
 金を溜めて、二年後、「名駒」を買い戻す。

・「名駒」を買い戻した後、会社を辞め、独立。
・ソフトウェア会社を立ち上げ、
 三年間働いていた外資系での知識と人脈で、
 二年後には、年商30億円の会社に育てる。


<再びの躓き>

・ITベンチャー企業の旗手などともてはやされ、
 テレビや雑誌にも採り上げられるようになると、
 ほころびが出始めた。

・先ず、一切連絡も持たないようにしていた父「庸一」が
 会社を訪ねて来て、金をせびるようになった。
・あまりにも頻繁に訪ねて来るので、
 社員も不審に思うようになる。

・そんな中、8年振りに、
 「東明重慶」が、「桂介」を訪ねて来る。
 「東明重慶」は、悪性の骨肉腫に罹っており、
 この先が長くないような様子だった。
・彼は、「桂介」に、
  ”今のお前の目は死んでいる。
   将棋を指していた昔の方が生きた眼をしてた。”
 と挑発し、1局10万円の賭け将棋で、
 「桂介」は5連敗する。

・「東明重慶」は、「名駒」を「桂介」から盗んで
 400万円で売った負い目が有り、
 50万円は帳消しになるところだが、
  ”どうしても金が要る。”
 と言うので、「桂介」は、50万円を渡してやる。

・その時、「東明重慶」は、「桂介」に、
  ”借りは、どんな形でもけりはつける。
   お前、殺したい奴はいないか?
   (400万円の代わりに・・・・・)    ”
 と持ち掛ける。

・何度も何度も金をせびりに来る父「庸一」との関わりを、
 最後にしようと3000万円を用意して父と会った時、
 「庸一」から、
  ”俺は、お前の本当の父親じゃない。
   お前の父親は、お前の母親の兄貴だ。”
   ”近親相姦で妊娠し、兄が自殺し、
    お前の母親が、俺に、
     「連れて逃げて。」
    と頼んで来たから、諏訪まで逃げて来たんだ。”
  と告げ、衝撃で立ちすくむ「桂介」から、
  3000万円を奪い、
   ”お前の中にも、お前の母親や兄貴のように、
    いかれた血が流れているんだ。”
   ”今の話をマスコミにばらされたくなかったら・・・”
  と告げて去って行く。
・そんな「庸一」に殺意を覚えた「桂介」は、
 「東明重慶」に「庸一」の殺害を頼み、実行される。

・半年後、「東明重慶」から電話が有り、
   ”約束は、果たした。”
 と告げる。
・加えて、「東明重慶」は、「桂介」に頼み、
 「天木山」の麓に連れて行き、
   ”ここは、子持ちの女と、
    一番人間らしい生活をした場所だ。”
   ”死んだ後は、ここに居たい。”
   ”俺と、最後の勝負をしろ。
    俺が勝ったら、お前は、俺を殺せ。
    お前が勝ったら、俺を置いて山を降りろ。”
 と頼む。

・二人は勝負し、結果、「東明重慶」は二歩の反則を犯し、
 負けてしまい、自分で匕首で腹を刺し、死んで行く。
・「桂介」は、穴を掘り、遺体を埋め、
 「名駒」も一緒に埋めてやる。