奉行所

 江戸時代の奉行所の
役割や組織に付いて、書き残す。


<警察検察裁判>

 現在の日本では、
・犯罪の捜査や逮捕は、警察。
・起訴(裁判に掛ける)判断は、検察。
・処罰の決定は、裁判。
と、役割が分かれている。

 しかし、江戸時代では、
・犯罪の捜査や逮捕は、
  奉行所の同心と岡っ引きなど。
・起訴の判断は、奉行所の与力。
・処罰の言い渡しは、奉行。
と、奉行所が全てを担っていた。

 だから、
今以上に、無実の者が罰せられる
冤罪(えんざい)が多かった。


<組織>

 奉行所の組織は、
次のようになっていた。
 現在と比較してみよう。

位置付け
役職
江戸時代 現代
役所 北町奉行所
南町奉行所
警視庁
トップ 奉行

主に旗本が
任命された
警視総監

エリートキャリアが
任命される。
幹部 与力 キャリア
部下 同心 ノンキャリア



<同心(どうしん)>

 江戸幕府は、
徳川家直参の「足軽」を、同心とした。
 よって、下級武士のことである。

 同心としては、忍者なども同心だが、
ここでは、奉行所配下の同心に付いて書く。

・同心は、上司である与力の下で、
  捜査や警備、事務の仕事をした。
 今の、警官、刑事、警察事務員である。

 同心は、
・北町奉行所に100人、
・南町奉行所も100人、
居た。


1)外回り同心

・捜査や警備の外回り同心としては、
  定回り同心、臨時回り同心、隠密同心
 が居た。
・外回り同心は、
  北町奉行所で30人ほど、
  南町奉行所も30人ほど、
 しか居なかったが、
  それだけの人数で、
 100万都市の江戸を歩き回って、
  今の警官や刑事の役を果たした。
・少ない人数で治安を守れないので、
  自分のポケットマネーで、
 岡っ引きや、岡っ引きの子分を使い、
  捜査や逮捕などを行なった。
・大名や旗本、裕福な商人などは、
  自分の家で問題が起きた時に、
 見回り同心に助けてもらう為に、
  日頃から付け届け(お金や物)をし、
 見回り同心は、基本給は低かったが、
  付け届けで裕福だった。
・また、付け届けのお陰で、
  岡っ引きや下っ引きに
 手当を与えることが出来たので、
  仕事が出来た。

・見回り同心は、
  一見で同心と分かる格好をし、
 格好良さで、人気を集め、
  火消、相撲取り、見回り同心は、
 「江戸の三大伊達男(だておとこ)」
  と持て囃された。

2)内働き同心

・奉行所の中で働く同心も居た。
・「物書同心」は、
  いわゆる「書記」や資料管理
 の仕事をしていた。
・「蹲(つくばい)同心」は、
  犯罪者や訴訟人を連れて来たりする
 仕事をしていた。
・会社で言う、総務や庶務の同心も居た。

・どんなに優秀な同心でも、
  身分が上の「与力」にはなれなかった。

<生活の苦しさ>

・同心は、幕府から、
  身分としての俸禄(生涯給与)、
  奉行所で働く手当(月給)、
 を貰っていた。

・見回り同心は、付け届けで裕福だが、
  内働きの同心は、付け届けが無く、
 夫婦で内職をしなければ
  生活が苦しかった。

・幕府から、八丁堀に、
  与力は、300坪、
  同心は、100坪
 の土地を貰い、家を建てて住んでた。
・生活費の足しにする為、
  貰った土地に長屋を建て、
   人に貸して家賃を貰ったり、
  貰った土地を人に貸して地代を得たり、
 して、収入を増やしていた。


<与力(よりき)>

 与力は、
地位的には、今の管理職であろうか。

・与力は、
  北町奉行所に25人、
  南町奉行所も25人、
 しか居なかった。


・吟味方与力は、
  犯罪者や訴訟人の取り調べを行なう、
 今で言う、検察官の仕事をした。
・自分で調べ上げた結果を、
  物書同心に清書させ、
 奉行に提出し、判決を貰った。

・与力も、
  大名や旗本、商人から付け届けを貰い、
 裕福だった。


<奉行(ぶぎょう)>

 奉行は、江戸の治安維持の
最高責任者である。

・与力や同心は、
  一生、奉行所で働くプロパー(生え抜き)
 奉行は、
  旗本や御家人が、任命されて就任し、
 数年間で交代した。
・大岡越前や遠山金四郎などが有名だ。


<奉行・与力・同心の関係>

・派遣されて来た奉行の中には、
  横暴な者も居たが、
 そう言う奉行には、
  与力や同心は、一致して対抗した。
 与力や同心は、
  一生奉行所で働く自負も有り、
 勝手な奉行には、
  表面的には従っても、聞き流したりした。


<世襲>

・同心や与力は、
  世襲ではなく、一代限りの仕事だった。
・しかし、実際は、
  退職する前に、息子を見習い修行させ、
 自分の退職と同時に、息子を就職させ、
  実質の世襲を行なった。
・幕府も、
  与力や同心の、
 特殊な技能の継承を認め、黙認した。



 中断