良書紹介
「連続殺人犯カエル男」


 いつものように、
いきなり、真犯人を書くと言う、
掟破りの粗筋とネタバレを書く。

 この小説は、
どんでん返しの繰り返しが、
作者の狙いなのに、
それなのに、私は、
いきなり、真犯人を書くので、
・そんなやり方が嫌いな人、
・この後、この小説を楽しみたい人、
は、読むのを止めてください。



<本当の本当の真犯人>

・犯罪心理学者の大家「御前崎宗孝」は、
  3年前、自分の娘と孫を殺されたが、
・犯人は、精神障碍者と言うことで、
  不起訴になり、
・その時、犯人の弁護をした、
  弁護士「衛藤和也(えとうかずや)」を
   恨んでいた。

・怒りを忘れられない「御前崎」教授は、
  「衛藤」弁護士の殺害を計画。
・しかし、
  いきなり「衛藤」弁護士を殺せば、
   自分が犯人と疑われるのは明白。
・なので、完全犯罪を狙った、
  複雑な計画を立てる。
・それは、かっての教え子の
  「有働さゆり」を殺人の実行者に
    させることであった。


<本当の真犯人「有働さゆり」>

・有働さゆりは、
  本名を、「夏緒(なつお)」と言う、
   少女だった。
・小学生だった「夏緒」は、
  母親が家を出て行ってからは、
   毎日のように、実の父親から、
    性的虐待を受け続けて来た。

・そのトラウマの所為か、
  自分よりも弱いネコなどを殺して、
   快感を覚えるようになる。

・そんな中、
  お人形のような、
   色白で可愛い転校生が来て、
 自分の父親が、その少女に興味を持ち、
  自分と比較するのを聞いて、
   怒りのような複雑な感情から、
    少女を殺害してしまうが、
  犯行現場を見付かり、逮捕される。

・「夏緒」は、
  犯罪を犯した少年少女の
   保護制度の適用を受け、
 「島津さおり」と言う新しい名前を貰い、
  「御前崎」教授の治療を受け、
   音楽の才能が有ったことから、
    ピアノを習わせてもらい、
  順調に回復して行く。

・成人した「夏緒=さゆり」は、
  犯罪者を支援する保護司になり、
 得意なピアノを使って、
  知的障碍者であり、
   以前、幼児を殺した罪を持つ、
    「当真勝雄」を支えていた。

・しかし、
  「衛藤」弁護士の殺害を図る、
   「御前崎」教授に、レイプされ、
 父親と慕っていたのに裏切られ、
  昔の凶暴性が戻ってしまう。
・「御前崎」教授は、
  「有働さゆり」の心を、
   自分の思うようにコントロールする。

・「有働さゆり」は、
  遮音性を高めたピアノ室を作ったが、
   そのローンが残っており、困っていた。
・凶暴性が蘇った「さゆり」は、
  自分を捨てて出て行った夫に、
   そっくりな息子「真人」を憎んでいて、
    虐待を繰り返していた。
・挙句の果てには、
  息子「」真人を殺して、生命保険を得て、
   ローンの偏財に当てようと考える。
・とは言っても、
  「御前崎」教授にそそのかされたのも、
   そうなった1つであるが。

・しかし、
  いきなり息子が死ねば疑われるので、
   その前に、何人かを殺し、
    息子も、被害者の1人と思わせる
     計画を練る。
・そして、
  自分を慕っている「当真勝雄」を利用し、
   「勝雄」に、
    ”自分が殺人を犯した英雄”
   だと信じ込ませる。

・「さゆり」は、
  殺害する対象者を、
   「当真勝雄」に選ばせるが、
 その対象者は、
  「勝雄」が雑用係で働く歯科医の、
   カルテの、あいうえお順だった。
・と言うのも、
  息子「真人」も、
   「う」=有働(うどう)として、
    順番の中に入るからだった。

・そして、「さゆり」は、
   1)「あ」荒戸玲子(20代OL)
   2)「い」指宿仙吉(老人)
   3)「う」有働真人(小学生)
   4)「え」衛藤和義(弁護士)
  の順番に殺して行く。
・その時、
  「当真勝雄」に手伝わせるが、
   「勝雄」には、
  ”自分が、殺人を行なった。”
  ”自分は、凄いことをしている。”
  ”凄い人間なんだ。”
 とすり込んで、思い込ませる。


<作られた犯人「当真勝雄」>

・「当真勝雄」は、
  父親から虐待を受けて育ち、
   歪んだ精神状態に陥る。
・「勝雄」は、カエルを捕まえては、
  色々な方法で殺し、
   それを日記に付けていた経歴を持つ。
・そして、遂には幼児を殺してしまい、
  医療少年院に送られ、治療を受ける。

・その後、退院し、社会復帰し、
  沢井歯科医院で、雑用係として過ごす。
・社会復帰後は、
  保護司の「有働さゆり」の支援を受け、
   「さゆり」のピアノ治療も受けていた。

・「勝雄」には、
  2つの、優れた能力が備わっていた。
   その1つは、信じられないほどの腕力で、
   もう1つは、抜群の記憶力、
  であった。

・「御前崎」教授に誘導され、
  息子「真人」の殺害を企てる「さゆり」に、
   上手に誘導された「勝雄」は、
  自分の勤める沢井歯科医院の
   カルテを盗み見して、
  最初の犠牲者である
   「あ」荒戸玲子(20代OL)の
    住所などを記憶し、「さゆり」に教える。


<連続殺人>

<第一の殺人>
・「さゆり」は、
  「勝雄」から聞いた「荒戸玲子」を、
   首を絞めて殺害し、
  「勝雄」を言いくるめて、死体を運ばせ、
    マンションの階段上に、
     フックでぶら下げさせる。
・その時、
  「勝雄」には、自分がやったと思わせ、
   「勝雄」が小さい時に書いていた日記の
  ”きょう、かえるをつかまえたよ。
   はこのなかにいれてあそんだけど、
   だんだんあきてきた。
   おもいついた。
   みのむしのかっこうにしてみよう。
   くちからはりをつけて
   たかいたかいところにつるしてみよう。”
 と言う、メッセージを残させる。

<第二の殺人>
・「さゆり」は、次に、
  「指宿(いぶすき)仙吉」を絞殺し、
   「勝雄」を使って、
    廃車処理場の廃車に入れさせ、
  車は、圧縮機で潰され、遺体も潰される。

・その時、
  小さな時に「勝雄」が書いた日記の、
   ”かえるを、つぶしてみた。”
   の文言を残す。

<第三の殺人>
・「さゆり」は、自分の一番の目的、
  息子「真人」を殺害し、内蔵をばらまく。
・その時も、
   ”かえるを、かいぼうしてみた。”
  とのメッセージを残す。


<世間と勝雄の反応>

・世間は、殺人事件の異常さに怯え、
  見えぬ犯人に、「カエル男」と名付ける。
・そして、新聞記者の一人が、
  ”荒戸(あ)、指宿(い)、有働(う)と、
    被害者は、あいうえお順に
     選ばれている。”
 と叫び、
  市内の「え」の名字を持つ者は、
   市から逃げるなど、大パニックになる。

・そんな中、
  日頃、世間から軽んじられ、
  雑用係りに甘んじていた「当真勝雄」は、
  ”自分こそが、世間を騒がすカエル男だ。”
  ”みんなが、自分のことを恐れている。”
 と、満足感に満たされる。


<警察の捜査>

・警察は、捜査を進める内に、
  犯人は、
   残された靴のサイズから、
    身長150〜160cmで、
   成人を持ち上げてフックに吊るせる
    ほどの体力があり、
   残された稚拙なメッセージから、
    精神的障碍を持つ者、
  と推測し、捜査を進める。

・埼玉県警の古手川刑事は、
  凄腕のベテラン刑事「渡瀬」と、
   捜査を進める。
・そして、
  「当真勝雄」を調べる担当になり、
   情報を得る為に、
  「当真勝雄」担当の保護司である
   「有働さゆり」に会って、話を聞く。

・そして、
  「有働さゆり」の優しさと、
   ピアノの演奏に癒され、
    すっかり心を奪われる。

<第四の殺人>
・「御前崎」教授の娘と孫が、
   障碍者に殺された時、
  被告の弁護をして無罪を勝ち取り、
   人権派弁護士と持て囃されたのは、
  「衛藤和義」だった。

・「衛藤」弁護士は、
  身体を壊して入院中だったが、
 世間が、
  ”次の犠牲者は、「え」の名字の者”
  と騒いでいるのに、
 強がって、車椅子で外出し、
  「有働さゆり」に首を絞められ、
   焼き殺される。
・そして、
  ”かえるを、やいてみた。”
  のメッセージが残されていた。

・「衛藤」弁護士の遺体を
  調べていた鑑識が、
   焼け焦げた遺体の口の中から、
    肉片を見付ける。
・それは、
  首を絞められた時、
   「衛藤」が、犯人の指の一部を
    噛み切った可能性が有ると言う。


<当真勝雄の逮捕>

・「古手川」刑事は、
  「当真勝雄」を調べていて、
    真面目な性格と生活態度に、
     犯人とは思っていなかった。
・しかし、
  「当真勝雄」に会いに行った時、
   「勝雄」に逆襲され、殺されかけるが、
  何とか逃れ、逮捕する。
・そして、部屋を捜索したところ、
   被害者の遺品、
   血の付いた凶器、
   現場に残されていた足跡に合うズック、
   メッセージと同じ内容の日記、
 などが発見され、
  「当真勝雄」も、「カエル男」と認める。

・連続殺人犯の逮捕で、
  世間は、やっと落ち着く。


<有働さゆりの逮捕>

・「当真勝雄」を逮捕出来たが、
  納得出来ない「古手川」刑事は、
 癒されたくて、「有働さゆり」を訊ね、
  ピアノの演奏をしてもらう。

・ところが、
  いつもは滑らかな演奏が、
   ところどころ、音が弱まる。
・それは、「衛藤」弁護士を絞殺する時、
  小指の肉を食い千切られたからだった。

・「古手川」刑事に気付かれたと知って、
  「さゆり」は、「古手川」刑事を殺そうとする。
・「当真勝雄」に痛め付けられた「古手川」は、
  逃げ回ることしか出来ず、
   拳銃で照明を壊し、
    ピアノの裏に隠れる。

・連続殺人の目的を尋ねる「古手川」に、
  「さゆり」は、
  ”大金を掛けた完全防音のピアノ室は、
    自分の生き甲斐だが、
   ピアノ教室だけではローンも払えず、
    この家を手放さなきゃならなくなる。”
  ”息子「真人」が死ねば、
    生命保険金と犯罪被害者給付金が
     5千万円ほど貰える。”
  ”自分を捨てた夫にそっくりな息子は、
    憎いだけで、可愛く思ったことは無い。”
 と白状する。

・揉み合いの末、「さゆり」に手錠を掛け、
  諦めさせる。

・こうして、
  真の連続殺人犯「有働さゆり」が逮捕され、
   事件は、完全決着を迎える。
・「当真勝雄」は、「有働さゆり」に利用された、
  と言うことで、釈放される。


<御前崎教授との面談>

・事件解決後、「渡瀬」「古手川」刑事は、
  色々とアドバイスを受けていた
   「御前崎」教授を訪問し、
     事件の概要を、報告する。

・その時、切れ者の「渡瀬」が、
   ”真犯人は、別にいる。”
   ”本当のことを喋ってほしい。”
  と迫る。
・それに対して、「御前崎」教授は、
  録音していないことを確認し、
   真実を語り出す。

・それは、
  ”4人もの生命が奪われながら、
    実行犯が精神障碍者という理由で、
     誰も罪に問われない”
  ”殺された4人の遺族はさぞかし無念だろう。
    今回ばかりは、世論も、
     刑法39条を永らえさせたことを、
      後悔するだろう。”
 と言うことだった。

・また、
  「御前崎」教授は、
   自分の娘と孫が、障害者に殺された時、
  弁護したのが、「衛藤」弁護士で、
   容疑者の精神鑑定をした医師は、
    「衛藤」弁護士の友人で、
      精神鑑定が歪められていた
       可能性が有る。
 なども明かす。

・しかし、
  「御前崎」教授の告白には証拠が無く、
   「渡瀬」「古手川」刑事は、帰って行く。


<当真勝雄の決意>

・真犯人は「有働さゆり」と言うことで、
  自由になった「当真勝雄」は、
   密かに誓う。

・僕がカエル男なのに、
  「有働さゆり」先生が、
   その名前を取ってしまった。
・でも、「さゆり」先生は、
   僕の代わりに、警察に捕まってくれた。
・僕に、続きをさせようと言うことだろう。
  僕は、期待に応えなくちゃならない。”
・「お」の名前の5人目は、決まっている。
  ”オマエザキ ムネタカ”
 だ。



 凄い!
三重になっている、どんでん返しだ。

 オチも、凄いよね。


 最後まで読んでくださり、
有り難うございました。